今日はベルギー人が自国に対してどんな感情を抱いているのか、筆者の経験談から書いていきます。
いつも通り、この記事は筆者の独断と偏見に基づいています。
実は新しい国・ベルギー
突然ですが、ベルギーって国がいつから始まったかご存知ですか?
「古いお城とか、中世の建物があるのだから、少なくとも1000年前ぐらい?」
と感じるかもしれません。
が、なんとベルギーって、建国からまだ200年も経っていないのです。
実はベルギーが成立したのは1830年、日本でいえば江戸時代が終わる頃ぐらいだったのです。
このことからベルギーは、「最も古い土地に建つ、最も新しい国」なんて呼ばれたりもします。
ベルギーは1830年まではオランダの一部だったのですが、独立戦争に勝って独立しています。
さらにその前にはスペインだったり、フランスだったり、オーストリア帝国だったり(大戦時にはドイツに2回攻められたり)、なかなか踏んだり蹴ったりの歴史です。
ベルギー人には国の誇りがない?!
私が驚いたのは、あるベルギー人がこんなことを言っていたときでした。
「プロテスタントのオランダと、カトリックのフランデレンでは相容れないから独立をした。だけど今となっては誰も宗教なんてまともに気にしやしない。だったらむしろ(経済的に強い)オランダと一緒になったほうがいいんじゃね?」
(ちなみに筆者は、オランダ語圏であるフランデレン地域に住んでいます。)
なんて言うので笑ってしまいました。半分はジョークのつもりだったのでしょう。
日本人としての「愛国心」がある筆者には、そんなことを言う人もいるのだなぁ、という感じでした。これは例えば、「日本はどうせアメリカの言いなりなんだから、アメリカ51番目の州になったほうが良くね?」と言ってるようなものですよね。
しかし、よくよく考えてみれば、地球を上から見ても国境は引かれてないわけで、アイデンティやら愛国心やらを抜きにして単なる「経済合理性」を優先するならば、彼が言っていることにも一理あると思いました。
他のベルギー人にも話を聞いていくと、どうもベルギー人がベルギーに対して抱くのは、
・オランダ、ドイツ、フランス(+イギリスも?)に挟まれた緩衝地帯であり
・過去には散々っぱら大国に侵略されてきた土地であり
・つまり大国の都合で成立したような国なので(緩衝地帯があったほうが都合が良かった)
あまり存在意義はないのだと(笑)
もちろんこれは筆者が聞いた友人の意見であり、別の友人(ほぼ同年代)に言わせれば、「我々にはベルギーというアイデンティティがあるのだから、今後もベルギーとして(ワロン地域とも)共存していくべきだ」という人もいます。
当然ですが、聞く人によって意見は分かれます。
分断した国・ベルギー
フランデレン人から聞いた話を元にすると、大きく3種類の考え方があるようです。
1.現状維持 ー 4つの地域がありつつ、ベルギーとして一体でいるべき
2.自治権の強化 ー 4つの地域をより独立した行政区にする。自治権を強化する(アメリカの州のようなイメージ?)
3.フランデレン地域の独立 ー フランデレン地域はベルギーから独立する(さらにその先のオランダ編入を目論む)
当然、現在は1の状態ですが、2の考えを指示する人もそれなりにいるようです。
フランデレン地域の人が自治や独立を議論する理由、それはベルギーでの南北格差だと言えるでしょう。北部のフランデレン人には南部のワロン人を自分たちの税金で助けているという意識があるからです。
この南北格差については、また機会があるときに掘り下げていきたいと思います。
「国」に対する捉え方がクールな人たち
今回の内容をベルギー人と話していて思ったのは、「国というコンセプトが私とこの人たちとでは違うのかな」ということでした。
日本人の私達は、国とは「切っても切り離せないもの」という感情で捉える傾向があるのではないかと思うのです。いわば、私=日本人 というような。
「もしも日本人じゃなかったら?」とか、普段考えることはしませんよね?
ましてや「日本の存在意義ってなに?」なんて考えたこともありませんよね? そんなことを言えば一部の人から怒られそうですね…(汗)
ですが、ベルギーほど大国に幾度も蹂躙されてきて、そのたびに自分たちのアイデンティティを変えざるを得なかった国の住人は、なにか国に対する捉え方が根本的に違うように感じます。
一言で説明しようとするなら、
「国は国、私は私」
という、そんな感じでしょうか。
アメリカ、中国など、名だたる大国が内向き(自国第一主義)になっていく中、ヨーロッパの国々も状況は似てきています。
そんな中ですが、このようにオープンな議論ができるベルギー人は、やっぱり「クール」なんじゃないか、と思う筆者でした。
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